このプログラムは国立大学法人金沢大学とパートナー自治体(石川県、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)によって実施されています

世界農業遺産『能登の里山里海』認定から5周年

6月11日。

5年前の中国・北京で行われた国際会議で、能登が先進地で初めての「世界農業遺産」に登録された日です。先月、登録から5周年を迎えました。能登にとっての世界農業遺産とは一体何なのか、市民も、行政も、そして大学も、手探りの中で模索してきたように思います。この認定を大きな後押しとして、地域の元気が少しでも高まるようにと関係者が努力してきた結果、良い変化が現れはじめていると思います。

世界農業遺産だからと、特別、普段の暮らしが変わった実感はないかもしれません。けれども、これまで脈々と受け継がれてきた、地域に対する誇りや愛着に加えて、世界的に認められた価値が能登にはある、という「新たな誇り」が増えたという感覚が、徐々に浸透してきたのではないでしょうか。

写真① 人手が加わった自然は、「あたたかい」(写真:宇都宮大輔氏)

なお続く危機

ですが、世界農業遺産認定後も、珠洲は言うに及ばず、奥能登の人口は減り続けています。耕作放棄地はどうでしょうか。大規模農地については農業法人の参入により活用が進んでいます。しかし、山間の水田をはじめとする小規模農地はなお、放棄地が増え続けています。これまでの農業・漁業・林業を担ってきた先輩たちが引退していくなかで、今のやり方のままでは能登の農業遺産が守れないかもしれないという、焦りにも似た危機感があります。地域の人による生業や草刈り・浜掃除などの集落維持活動、これら当たり前の、無数の人の地道な取り組みが能登の里山里海の景観を作ってきたのだと、実感せずにはいられません。この里山里海を、次の世代の子たちにつなげていけるのでしょうか。

 

写真② 里山の景観をつくる地道な仕事
(写真:NPO法人能登半島おらっちゃの里山里海)

外部からの評価は?

2013年5月に和倉温泉で開催された、世界農業遺産に関する世界会議では、なんと能登(NOTO)の名がつく共同声明(コミュニケ)が採択されました。この中で、世界各地の世界農業遺産に認定された地域は、取り組みが持続可能なものになっているか、生物多様性は健全に守られているのかなどをモニタリング(継続的な点検)すること、他の認定地域との連携を深めること等に取り組むことを合意しました。この5年間で世界農業遺産の制度が国内外で知られるようになり、地域活性化に活かそうと各地でも認定申請の動きが増えています。今、能登は先進地として他の認定地や、これから認定を考えている地域の「手本」「先導役」となる役割が期待されています。

そして今年4月、農林水産省が設置した専門家会議により、能登の取り組みに対する最初の外部評価がありました。しかし、結果は残念ながら辛めの評価だったといいます。これは日本で最初の認定地としての期待の裏返しともいえます。能登に住むみなさんの自己評価(地域の目線からの評価)はどうでしょうか?次回はこの外部評価で指摘されたポイントを中心に、珠洲の視点で捉え直し、里山里海の持続可能性について考えていきたいと思います。

 

執筆者:伊藤浩二
(2016.7.1発行「広報すず」記事を一部改編)