このプログラムは国立大学法人金沢大学とパートナー自治体(石川県、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)によって実施されています

あらためて、世界農業遺産とは何なのか

先月は世界農業遺産認定5周年を迎えて、能登の取り組みが農林水産省の専門家会議によって外部評価を受けたお話しをしました。評価結果は「能登の里山里海GIAHSアクションプラン」の一部として、県のホームページ(「能登の里山里海情報ポータル」)に公表されていますので是非ご覧になってください。
 

あらためて、能登の世界農業遺産とはいったい何なのでしょうか。認定対象となった生業の例として挙げられているのは、里山では棚田での水稲栽培をはじめとする農業や炭やき等、里海では海女漁や定置網漁業、揚浜式塩田等があります。そしてこれらにまつわる祭り、神事、食事などの文化祭礼、伝統技術、生物多様性、景観、保全活動がたいへん多様であり、総合的に優れていると評価されています。
 
一方で外部評価では、個々の生業や取り組みが、里山や里海とどのように結びついているのか、持続可能な農林漁業のしくみ(システム)としての特徴を十分アピールできていないと指摘されています。
 
また里海に対する検討が不十分であり、地域の水産業そのものの伝統性、持続可能性を評価すべきとの指摘もありました。とくに里海の恵みが里山の環境によって育まれていることについて、議論を深めて欲しいとの指摘がありました。

 

能登の里山里海と「システム」

 
世界農業遺産は、「社会や環境に適応しながら、何世代にもわたり形づくられてきた伝統的な農林水産業と、それに関わって育まれた文化、ランドスケープ、生物多様性などが一体となった世界的に重要な農林水産業システム」(農水省による定義)とされます。システムとは、わかりやすく言うと「つながりを大切にすること」だと言えます。例として、珠洲の揚浜式塩田をあげましょう。

私たちは伝統的な塩づくりにこだわっていきたい。それが能登の世界農業遺産である里山と里海のつながりを活かしたものであるからです。

これは5月14日の里山里海マイスターの講義で「すず塩田村」の横道代表から伺った印象的なひとことです。かつて釜屋で塩を焚く燃料を調達するヤマを「塩木山」と呼び、そこから薪や柴、カヤを集めて、それらを上手に使い分けていました。そうすることで良い塩の結晶を作ることができるということです。横道さんは「簡単ではないが、今は途絶えてしまった塩木山をいずれ復活させたい」との思いを持っています。海と山、両者が隣接する半島だからこそ生まれた揚浜式塩田は、まさに里山と里海のつながりを活かした産業だといえます。
 

別の方のお話によると、そのように手入れの行き届いた明るい山では、今では大変珍しくなってしまったクルマユリが咲いていたと言います。私は植物生態学者ですので、揚浜式塩田と山のつながりを取り戻す活動の中で、このクルマユリを「里山と里海のつながり」のシンボルとして地域で保全できないか、研究を重ねています。
 

塩田村に集められたシバ(手前)。現在はスギの間伐材の割木が主に使われています。


 

執筆者:伊藤浩二
(2016.8.1発行「広報すず」記事を一部改編)