このプログラムは国立大学法人金沢大学とパートナー自治体(石川県、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)によって実施されています

第7回 里山里海と福祉・健康

日時:2017年7月15日(土)9:30~17:00

場所: 能登学舎、珠洲市文化芸術交流拠点施設「文藝館」

講義:「はじめよう 農福連携!~全国で広がる農業分野での障害者就労」
講師:農林水産政策研究所主任研究官 小柴 有理江 氏

話題提供:
・「輪島KABULETのとりくみ」
———講師:竹中成行さん(里山里海4期修了生)
・「自然栽培の里@のとの取り組みと福祉の連携」
———講師:小島友紀さん(里山里海2期修了生)
・「メンタルヘルスプログラムと里山農業(仮)」
———講師:足袋抜豪さん(里山里海3期修了生)
・「珠洲市が目指すヘルスツーリズム」
———講師:佃菜穂さん(里山里海4期修了生)

実習:
・「りふれっしゅ村鉢ヶ崎内「クアの道」でのクアオルト体験」
講師:加藤 美紀氏(アンサール・カトウ代表、健康運動指導士・インストラクター)

その他
・能登GIAHS調査実習ガイダンス
・卒論テーマ報告会に向けた、担任別グループ相談会

概要:

近年注目されてる、農業の持つ福祉力に着目した「農福連携」「ヘルスツーリズム」について、実践現場をよく知る方々から可能性と課題について伺い、能登の地域づくりに活かす道を探った。

午前中は農福連携をテーマに講義と話題提供を行った。冒頭に小柴氏から、障がい者にとっての農業のもつ価値、農業サイドから見た障がい者への期待を整理した上で、実際の農福連携の事例を動画も交えて紹介した。農福連携を通じて、それぞれの収入がアップするほか、障がい者にとって「ありがとう」と言われる機会が増えることでやりがいが生まれるなど、相互の課題が解決されることを示した。農福連携の拡大とさらなる発展には、福祉と農業の接点となる「はじめの一歩」になる交流機会が重要であること、農業サイドと福祉施設サイドをつなぐコーディネーターの役割の重要性を指摘した。

次に能登で農福連携を実践するマイスター修了生からの話題提供があり、七尾市を中心に活動する農業グループ「自然栽培の里@のと」の小島氏が、自然栽培ならではの手間をかけることを重視した農福連携の実践事例を紹介したほか、農福医連携の場作りへの展望を示した。輪島カブーレ(社会福祉法人佛子園)の竹中氏は、就労継続支援A型事業として農園で栽培した野菜を利用した配食サービスや、伝統産業である輪島塗に不可欠なウルシ再生活動につながる、ウルシ染めストールの製作事業などを紹介した。

午後は里山とヘルスツーリズムをテーマに実習と話題提供を行った。まず、加藤氏指導のもと「クアの道 鉢ヶ崎里海コース」を利用したクアオルト体験を行い、里山里海を利用した健康づくりを実感した。併せて、血圧測定や脈拍モニタリング、唾液アミラーゼによるストレスチェックを行い、効果測定の方法にも触れた。

話題提供では、べジュール合同会社代表の足袋抜氏が、同社が大学と連携して実施したメンタルヘルスツーリズムプログラムの成果を紹介し、珠洲での農業や里山里海体験が抑うつ改善効果を持つことをエビデンスで示した。珠洲市地域おこし協力隊の佃氏は、珠洲市で取組まれているヘルスツーリズムを紹介し、地域の多様な資源を活用して観光誘客につながる魅力化が必要であることを述べたほか、単に身体的な健康だけでなく、楽しさや心地よさ、喜びや感動を通した、自分自身を見つめ直すためのヘルスツーリズムという特色を打ち出すことを提案した。

受講生のレポートから

午前中の講義と話題提供から、能登の里山里海と福祉分野の連携に、どのような可能性と課題を感じたか、あなたの考えをまとめて下さい。

Aさん

(可能性)
・就労施設では中々安定した仕事がもらえないと、今通ってるボランティアで聞いたことがあり、もっと 高度な仕事が出来る障害者の方は沢山いるのに簡単な就労しかない現実 を見ていたので 、農福連携はお互いの不足部分を補い合いながら社会も人も成長できるい取組み だと感じた。
・田舎では障害者への偏見がすごく強いと施設のスタッフが言っていたので、こうした就農 を通じて、社会に見える形で障害者の方に役割が与えられることで、偏見を少しずつ和らげ、お互いのコミュニティが広がって多様化していくと いいなと感じた。
(課題)
・そもそも農福連携自体が、社会福祉法人の経営者にあまり知られていなよう感じる。また 、偏見 や手間を感じて を感じて参入しづらい部分があると思うので、行政やコーディネーターが積極的に企業や地域 との調整役として働 く必要があると感じた。

Bさん

(可能性)
障がい者や高齢者・貧困者などに里山での労働体験を通じて、その人に応じた労働の機会をもってもらえる環境を提供できる可能性が感じられた。農作業の中で「コツコツと地道に行う作業」が、障がい者に特性があるというのは、少し一方的な見解だと思うが、それぞれの人でも行える作業(労働)は存在するであろうし、その就労支援をすることが福祉として重要だと感じた。
(課題)
独立採算が見込めないということだったので、ローコストで運営できる仕組み作りが重要だと思う。そのためには、まだまだ根強い世の中の偏見を少しでも取り除いて、社会全体として福祉の分野に任せられる仕事を区別して、事業として確立していかなければならないと思う。効率性・採算性だけを突き詰めていく従来の資本主義的な考え方では成り立たないと思った。

Cさん

(可能性)

農業の担い手不足・人手不足の解消、耕作放棄地を使い農業に使うことができる。障がい者さんの経済的自立の支援ができる。また生きがいを持ってもらえる。

(課題)

障がい者の方が仕事をどこまでできるのかの個人差が大きく、判断が難しい。仕事を教える方の根気が必要となってくる。スムーズに作業するのが難しい?時間がかかる?教える方は障がい者の方についての勉強、知識を学ぶ必要がある。間に入ってくれる人がいるかどうかも大切。

Dさん

(可能性)

農福連携により、農地の維持・管理や担い手不足をカバーできる。障がい者にとっても能力を活かし、働ける環境は良い影響を貰える機会だ。就労付きサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)は、今後ニーズが高まっていくように感じた。能登の里山里海との連携は農業、漁業、林業でマッチングできればと思う。

(課題)

農業・福祉に詳しいコーディネーターの存在が良いマッチングを生む。地方公共団体の支援が受けられる間は良いが、受けられなくなったときは継続していけるだろうか?

 

午後の体験実習と話題提供から、能登の里山里海を生かしたヘルスツーリズム(観光)や地域住民の健康増進に、どのような可能性と課題を感じたか、あなたの考えをまとめて下さい。

Eさん

(可能性)
能登の自然だからこそ、できることだと思った。都市部のように人工的に作られた施設ではなく、既にある環境を活用したものだからこそ、健康に対する説得力も大きいのでは、と感じた。また、高齢者の多いこの環境だからこそ、大いに需要があるし、外出してもらった中で、経済を活性化させる大きな手段であると感じた。

(課題)
観光者の獲得や移住者呼び込みの視点として弱さがあるように感じた。観光者の呼び込みにおいては、高価なプランのように感じる部分もあり、ハードルが少し高いように感じた。また、ヘルスツーリズムというキーワードにおいて、女性をターゲットとしたプランも多く考えられる可能性もあるように感じ、子育て世代の呼び込みを想定した取組も強化することにより、人口増にも繋げていく必要があると感じた。

Aさん

(可能性)

土に触る+遠いところ=ストレス減というデータから考えると、東京からの絶妙な距離感と能登の自然の豊かさは、心を癒やすヘルスツーリズムには最適な場所だと感じた。うつ病の人が100人のうちに4人いる現在、ヘルスツーリズムの社会的な要請はとても高い。例えば温泉の湯治療法のように近くの病院と連携して身体を癒やすのと同様に、ヘルスツーリズムによって心を癒やすという考え方が社会一般に浸透すれば、心を一時的に病んでしまった人の回復を助ける手段の一つになり、社会復帰を少しづつ促すこともできるのではと思われた。

(課題)

人の心を扱うというのは、一方ですごく繊細であるため、医療機関との連携をもう少し強めていくか、専属のスタッフを入れたほうが良いのかなと思った。

Dさん

(可能性)

クアオルトは老若男女が参加できるので珠洲の色んな場所にコースがあれば地域の住民のみならず、観光にも活かせると思う(ツバキロード、正院川尻城跡)。珠洲市のような自然を感じられる場所こそ、ヘルスツーリズムにはふさわしい。農業や山だけでなく、海に入りながら癒やしを感じられるものがあると良いと思う。

(課題)

受け入れ側(コーディネーター)の人材育成。コースの整備、看板、管理。どんなコースで運動したいか?のニーズを調査し、それに合うコースを整備する。