このプログラムは国立大学法人金沢大学とパートナー自治体(石川県、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)によって実施されています

第13回「多様な主体の協働による現代の里山保全」

日時:10月21日(土) 9:30-16:30

場所:金沢大学角間キャンパス(「角間の里」および里山ゾーン内)

プログラム:
野外実習「角間キャンパス・里山ゾーンにて里山保全活動(下草刈り)」
特別講義「『能登里山里海マイスター』への期待」 山崎光悦 氏(金沢大学長)
フォーラム「多様な主体の協働で、里山を新たな産業創造の場にしよう」

  • セッション1「金沢の里山に関わる人々~金大角間キャンパスを事例に」
    ・宇野文夫氏「角間キャンパスでの里山保全活動のあゆみ」
    ・河崎仁志氏「つながりから生まれる森づくり活動~多様な主体との協働による活動の進め方~」
    ・金沢大学里山サークルracoon 吉里氏 「活動紹介」
  • セッション2「マイスター修了生による里山利活用の実践」
    ・米山修介氏(綿の輪 代表)「オーガニック農法コットンの普及について」
    ・北崎友和氏(オーガニック ベジ&ライフ うつろふ 代表)「オーガニック ベジ&ライフ うつろふ」
    ・前川浩透氏(株式会社ゆめまき 代表)「薪まきハウス 『里山レスキュー』」

振り返り・意見交換

 

概要: 会場を金沢大学角間キャンパスとして講義・実習を行った。午前中は多様な主体が参加する里山保全活動を体験する目的で、金沢森林組合、NPO法人角間里山みらいの方のご指導の下、山崎学長、金沢大学生、民間企業のCSR活動参加者と一緒に、キャンパス内の谷戸(小さな谷あい)で手鎌を使った下草刈りを実習した。その後、「角間の里」において山崎学長による講義があり、日本の農林漁業の現状と、先端技術を活かした持続可能な産業・社会の構築について解説があった。

午後は、飯田(2017)が提案する、里山での多様な主体の協働と支援の仕組みを通じた「地域産業体」の構築を議論の下地に、主に金沢の里山を舞台にした、多様な主体との関わりから生まれた「里山の共有価値の創造」について実例の紹介と、意見交換を行った。セッション1では、宇野氏は金沢大学の里山プロジェクトの活動の紹介を通して、国際機関との連携により日本の里山を世界のSATOYAMAとして価値共有してきた流れを紹介した。河崎氏は、角間キャンパスを主な舞台にしたNPOによる里山活動を紹介し、民間企業や学生、障がいを持つ方など様々なパートナーとの協働を通じて、互いの思いを形として実現する重要性を強調した。吉里氏は、学生が里山により親しみを持つためにキャンパスの竹林を活用したイベントの主催や交流事業を通して、楽しみながら参加することの重要性を述べた。

セッション2では、米山氏が角間キャンパスで取り組むオーガニックコットンの栽培と利用の普及活動について紹介し、WebやSNSを活用したネットワーキング・知識の活用の可能性を指摘したほか、衣料系の会社や学生とのタイアップを通した運動の広がりを展望した。北崎氏は新規就農者として実践する、落ち葉や竹チップなどの「里山バイオマス」を活用した炭素循環農法による野菜栽培と農産加工、マルシェでの販売等について紹介したほか、料理専門学校との連携の取り組みを通して、「いい相手と、依存ではなく活かし合う関係性の構築」の重要性を説いた。前川氏は里山の広葉樹を薪として加工し、個人やレストラン等に販売することを通して、ビジネスによる里山保全を図る実践例を紹介し、「大規模でなくても、価値のある流れ」を作り出す重要性を指摘した。

*飯田義彦(2017)新たな森の産業創造~石川県における林業事業者の挑戦. 「森林環境2017特集・森のめぐみと生物文化多様性」, 森林文化協会, p.102-111.

 

 

受講生のレポートから

① 山崎学長の講義を聞いての感想をお書きください。

Aさん

金沢大学角間キャンパスにおける里山の荒廃の流れと、その状況を変えようとしている取り組みについて、具体的なお話を聞けたのがよかった。ただ、個人的に感じたこととしては、仕事(報酬を得る作業)として里山の保全を行える環境が生まれない限り、広大な土地を継続的に管理し続けるのは困難なのではないかと感じました。講義後半に、バイオリファイナリー(植物由来の燃料や化学製品の精製)に関する研究の話題がありましたが、これらのことが事業として成立するようになれば、継続的な里山保全につながる素晴らしい科学技術だと思いました。

 

② 午前の実習(里山保全活動)と午後のフォーラムを通して気がついた、里山保全における現状の課題・問題点と可能性についてまとめてください。

Aさん

活動の多くが、無償のボランティアを前提に開催されているように感じました。現時点では、里山に経済的価値がほとんど見いだせないことがとても寂しく思います。「金沢大学角間キャンパスの敷地の里山(利用)は、学長の許可さえあればよい」という言葉が私にとっては、とても印象的で、今後、バイオマス資源が事業として成立するようになると、土地の権利関連の問題がクローズアップされると予想され、現状とは違う形で、非常に複雑で難しい利権問題が発生するのではないかと考えてしまいます。

Bさん

つるが伸びている状態が「(山が)荒れている証拠」だと聞いた時、保全とは何なのかをもっと知らなければならないと感じたし、もっと広める必要があると感じました。このように素晴らしい活動を行っている人たちは多数いるので、それらをいかに広めていくか、が課題であり可能性でもあると思います。

 

 

③ 多様な主体の連携により里山活用の可能性が広がる例について、今回の講義を通して自身が一番関心を持った事例を取り上げ、何が成功のポイントなのか、改善に必要なポイントはないか? を分析してみてください。

Aさん(関心を持った事例) 前川氏の薪まきハウス

薪という商材を必要とする事業や家庭に対する販路を確保し、収益をあげている点が素晴らしい!今後、継続的に材料を確保するために原木を仕入れるのではなく自社生産を目指すことで、里山の管理(自社保有・他者保有は問わず)を実施し、保全につなげようとする試みはとても評価できると思われます。その一方で、薪という単一目的だけで里山が成立するのか疑問が残りました。

Bさん(関心を持った事例) うつろふの炭素循環型農法

北崎さんの熱意が最大のポイントだと感じました。また明確な思いを持って動かれていることが多くの成功につながっていると思います。人員を先に増やすか、収益が上がってから人員を増やすかという判断が大事になってくるのでは?と感じました。