このプログラムは国立大学法人金沢大学とパートナー自治体(石川県、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)によって実施されています

座談会「受講生が語るマイスタープログラム」

(2018年1月掲載)

 

北村:2018年2月号から3回にわたって、『広報すず』のなかの能登学舎のページを担当することになりました。僕は、これを、珠洲の人たちとの対話の機会として活用したいと考えています。今回は、能登学舎で実施されている「能登里山里海マイスター」育成プログラム(以下「プログラム」)受講生で珠洲市民の松田咲香さんと今井誠さんをお迎えして座談会の形でお話したいと思います。早速ですが、お二人はいつ頃プログラムのことを知りましたか?

松田:私は4年前に珠洲に戻ってから、プログラムのことを何となく聞いていました。実は、昨年度に入ろうと考えたのですが、しばらく船に乗る仕事が入ったので断念しました。その仕事が終わった今年度に入りました。知り合いのマイスター(修了生)からの勧めもありました。

 

今井:プログラムのことは、10年前の開始当初から知っていました。ただ、当時は2年間、毎週末通う形だったので、仕事のスケジュールと折り合いがつきませんでした。現在のプログラムは1年間、月2回の実施なので何とか調整できます。地元の活動をするときの仲間にマイスターが多くいます。同い年の友人がマイスターで、彼から強く誘われたこともきっかけとなりました。

 

北村:プログラムに期待していたことは何ですか?

 

松田:色々な人たちと知り合いたいと思っていました。

今井:僕も、人のネットワークを広げたいと思っていました。マイスターはすごい人ばかりですので。

 

北村:その期待は今のところどのくらい満たされていますか? 100点満点で点数を付けてみてください。

 

松田:ほぼ満点です。とても楽しんでいます。

 

今井:入る前が100点とすれば、今は150点くらいになっています。林業に関心を持つ受講生が他にもいて「チーム林業」として活動できるなど、期待以上のことが起こっています。これもすべて縁(えん)だと感じます。

北村:僕たちは今、講義の合い間の昼休みに里山里海食堂「へんざいもん」の料理を食べながらお話ししています。へんざいもんの食事についてどう思いますか?

(この日のメニューはサバの味噌煮や粕汁など8皿)

 

松田:おいしくてお値段も安いので好きです。これぞ、地元のおかあさんたちが作った料理、という感じですね。

 

今井:魚、煮しめ、豆や発酵食品など体に優しい食材が多く入っているのが嬉しいですね。このような食事が合う年代になりました(笑)。

 

北村:地元三崎町のおかあさんたちが、マイスター受講生やスタッフなどのために、里山里海の恵みを味わう機会を作ってくれて本当にありがたいですね。プログラムを受講することの特典として魅力的な「場」になっているようです。場といえば、今我々のいる能登学舎は、お二人にとってどんな場所ですか?

 

松田:NPO法人(能登半島おらっちゃの里山里海)が1階にあり、以前にも来たことがありましたが、2階のことはよく知りませんでした。

 

今井:確かに、1階は地域とつながる活動をしているのですが、2階では大学の先生たちが何人かいることは知っていても、日頃何をしているのか見えにくいです。能登学舎のあるここ小泊の在所でも、能登学舎が何のためのあるのかわからん、という声を聞きます。一緒に行事を開催したり、飲み会に参加したりして顔の見える関係を作るとよいのではないかと思います。

 

北村:ご助言ありがとうございます。地元の人たちとの交流はこれから強くしていきたいと思います。さて、再びプログラムについてですが、受講して印象に残ることは何ですか?

 

今井:講義だけでなく、ワークショップなど実際に手を動かす部分があるところはよいと思います。

 

松田:私も、地元の人たちを招いて聞き取りを実践するワークショップがよかったです。元々知り合いだった人たちですが、あのような形で改めてお話を聞くのは初めてで、貴重な機会となりました。また、里山の植物を見に行く実習に参加したのですが、これもよかったです。能登の薬草に元々興味を持っていましたので。

 

今井:僕は、チーム林業が企画した林業関連の実習が特に印象的でした。山に行って木材の伐採現場を見て、その場で丸太を買うというのは初めてでした。自分ひとりなら行くことはなかったでしょう。製材所など林業の色々な持ち場の人たちがどう考えるかを知ることは貴重です。今後、マイスタープログラムの体験型の実習として活用できる可能性を十分に秘めているのではないでしょうか。

 

北村:実践的な内容を受講生が求めているということですね。今後の参考にしたいと思います。さて、プログラムの卒業の条件のひとつとして、受講生各自が課題を設定して研究論文を書く作業(いわゆる「卒論」)があります。お二人は卒論テーマとしてどんなことに取り組んでいますか?

 

松田:奥能登のお祭りについて写真を中心に伝える活動をテーマにしています。

 

今井:僕のテーマは、里山との繋がりに焦点を当てた住宅のリフォームです。

 

北村:どちらも、元々取り組んでいた活動だと思います。プログラムを受講することでどのような変化がありましたか?

 

松田:担任の岸岡先生はじめ他の人たちと相談することで方向性が定まりました。聞き取り調査をする前の質問作りから、実際の聞き取りまで一緒に相談しながらできたのでよかったです。

 

今井:古民家リフォームのワークショップを以前から開催していました。プログラムに入ってからは、能登以外から来る受講生のなかに林業に関心を持つ人たちがいることがわかり、双方をつなぐことで活動の広がりが生まれました。

北村:プログラムについて改善すべき点はありますか?

 

今井:トイレ休憩をもっとこまめに入れてほしいです。また、人間の集中力は90分が限界という話がありながら2時間続けて講義があることもあり、少々きついです。

 

北村:ご指摘ありがとうございます。今後の改善に生かしたいと思います。最後に、未来の受講生に伝えたいことはありますか?

 

今井:興味があるなら受講してみることをお勧めします。変わった人間とたくさん出会うことができます(笑)。

 

松田:このプログラムは、受け身で参加するだけでなく、自分に合うように変えることができるのがよいところです。例えば今3人で会話していますが、自分の口を開かなければ何も起こりません。話すことでチャンスが生まれます。自ら飛び込んで、行動を起こすことができる場がマイスタープログラムです。

 

北村:今日の対話から僕自身多くのことを学びました。ありがとうございました!

 

(この座談会は2017年12月16日に能登学舎で実施されたものです。本稿は、『広報すず』2018年2月号掲載記事に加筆修正した「完全版」です)

 

プロフィール

松田咲香(まつだ さきか):飯田町出身。写真を撮りながら地域文化の取材を重ね、各種媒体で発信している。

 

今井誠(いまい まこと):蛸島町出身。木造家屋を中心とする建築・設計を本業としつつ、様々な活動を通じて珠洲を盛り上げようと奮闘中。

 

北村健二(きたむら けんじ):神奈川県出身。2017年6月から金沢大学能登学舎に勤務。参加型による学び合いの場づくりを目指している。

 

撮影:岸岡智也(金沢大学能登学舎)