このプログラムは国立大学法人金沢大学とパートナー自治体(石川県、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)によって実施されています

【2/03】シンポジウム 「地域の価値」を活かした農村の暮らしと生業

日時:2018203

場所:金沢大学能登学舎(珠洲市三崎町小泊337

プログラム

9:30〜10:30 佐無田光 奥能登の地域経済と「地域の価値」〜奥能登国際芸術祭の後

10:40〜11:40 菊地直樹 コウノトリの野生復帰事業と有機農業の事例に学ぶ

11:50〜12:30 質疑応答

12:30~13:30 昼食

13:30〜16:30 話題提供、パネルディスカッション

「地域の価値」を活かした農村の暮らしと生業

話題提供1:眞壁陸二 「アートが引き出す地域の価値」

話題提供2:伊藤浩二 「生物文化多様性の視点から見た『能登の価値』」

 

概要

いま日本では「ローカル」が一種のブームになっている。日本経済の成長モデルが機能しなくなり、ポジションを見失った地域が、様々な地域資源を活用した地域再生アプローチを登場させた。政府の「地方創生」政策で、地域特性に応じた地域政策や、地域内経済循環が強調されている点は、従来の国の政策にはなかった側面である。「田園回帰」現象が注目され、人口がわずか数百人から数千人程度の「限界的な」過疎市町村でも、転入超過が観察される。20〜30代の若い年齢層の人々ほど農漁村地域への移住希望が高く、地域に根ざした新しい生き方、働き方を求めるムーブメントがある。

現代の資本主義において、人々は認知された「知識」や「情動」を消費する。「地域性」(locality)はいまや希少な資源である。仮想現実的な商品であふれた都会の暮らしに疲れた現代の人々に欠乏するニーズである。現代社会には、「田舎暮らし」や「最果ての環境」に対する憧れがあり、「ローカル」に向かう人々の関心を、企業はビジネスの機会として利用する。大都市のコンサル企業等は「ローカル」をPRするまちづくりコーディネートをビジネスにする。

奥能登では今年、国際芸術祭が開催され、アートとして表現された「地域の価値」がいかに大量に消費されるかを経験した。「消費される農村空間」となることを選択することは、いかなる意味を持つのか。それは地域経済にどう影響するのか。継承するべき「地域の価値」の本質とは何か。

今回は、佐無田教授の講義をとおして、奥能登国際芸術祭が提起した「地域の価値」を検討しながら、奥能登の地域経済と「地域の価値」を学んでいただきます。また、菊地准教授の講義では、コウノトリの野生復帰の活動事例を紹介しながら環境社会学の視点からの「地域の価値」を学んでいただきます。最後は、画家で、奥能登芸術祭作品「青い舟小屋」の作者である真壁陸二氏と伊藤准教授を交えて能登半島の「地域の価値」を作り出すにはどのような条件が必要かについてディスカッションを行います。

講  師  紹  介

 

佐無田 光(さむた ひかる)

1974年、横浜市生まれ。金沢大学人間社会研究域教授・地域政策研究センター長。

横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。

専門は地域経済学。主な業績:『北陸地域経済学』(共編著、日本経済評論社)、

『自立と連携の農村再生論』(分担執筆、東京大学出版会)など。

菊地直樹(きくち なおき) 1969年生まれ。 兵庫県立大学自然・環境科学研究所講師/ 兵庫県立コウノトリの郷公園研究員、総合地球環境学研究所准教授を経て、2017年から金沢大学人間社会学域准教授。専門は環境社会学。主な著書に、『「ほっとけない」からの自然再生学―コウノトリ野生復帰の現場』(京都大学学術出版会2017年)、『蘇るコウノトリ―野生復帰から地域再生へ』(東京大学出版会2006年)、『但馬のこうのとり』(池田啓と共著 但馬文化協会2006年)、『自然の社会地理』(分担執筆 海青社2013年)、『なぜ環境保全はうまくいかないのか―現場から考える「順応的ガバナンス」の課題』(分担執筆 新泉社2013年)、『野生動物の餌付け問題―善意が引き起こす生態系撹乱・鳥獣害・感染症・生活被害』(分担執筆 地人書館2016年)、『どうすれば環境保全はうまくいくのか―現場から考える「順応的ガバナンス」の進め方』(分担執筆 新泉社2017年)など。

眞壁 陸二(まかべ りくじ)画家

1971年金沢市生まれ。多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業。卒業後予備校講師、多摩美術大学油画科助手を経て、神奈川県茅ヶ崎市で実験的現代美術スタジオebakam art studio設立。2010年に瀬戸内国際芸術祭に参加した事をきっかけに日本各地の芸術祭に参加。「瀬戸芸 男木島」の作品が高校美術1(日本文教出版)に掲載される。国内外の公共施設、ホテル、美術館などコミッションワークを手がける。設置する地域のリサーチに基づき その土地に最も相応しいと思われるサイトスペシフィックな作品を作る。2017年 奥能登国際芸術祭スズには「青い舟小屋」で参加。2011年から金沢に活動の拠点を戻し制作をおこなっている。

主な個展:2012-15年 BASE GALLERY 東京、2012年 triumph gallery モスクワ、2015年   star gallery 北京、他

主なグループ展 芸術祭:2010 2013 2016年 瀬戸内国際芸術祭、2012 2013年 イチハナリアートプロジェクト、2017年 奥能登国際芸術祭

伊藤浩二 (いとうこうじ/金沢大学地域連携推進センター 特任准教授) 1978年北海道生まれ。2008年東京大学大学院修了、博士(農学)。専門は植物生態学。2008年より金沢大学里山里海プロジェクトにおいて、能登の地域リーダー向けの人材養成プログラムの運営と、市民協働による里山の生態研究に携わる。金沢大学の地域連携拠点である「能登学舎」(珠洲市)に勤務。著書に「里山復権~能登からの発信」(創森社、分担執筆)、「観察する目が変わる水辺の生物学入門」(ベレ出版、共著)がある。