このプログラムは国立大学法人金沢大学とパートナー自治体(石川県、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)によって実施されています

座談会「能登学舎の最も身近なお隣さんたち」

(2018年2月掲載)

 

北村:「広報すず」の「金沢大学能登学舎の窓から」というコーナーを2018年2月号から3回にわたって僕が担当することになりました。そして、これを僕は珠洲の人たちとの対話の機会として活用させていただくことにしました。今回は、能登学舎の地元である三崎町小泊(みさきまちこどまり)にお住いの新谷泉さん、濱本吉昭さんというおふたりをお招きしてお話ししたいと思います。

左:濱本吉昭(はまもと よしあき)さん(小泊青壮年部長)

右:新谷泉(しんや いずみ)さん(小泊校下地域振興会事務局長)

 

北村:なお、「広報すず」ではおふたりですが、この「完全版」では濱野良夫さんにも助っ人として参加していただけることになりました。よろしくお願いします。

 

濱野:「広報すず」のほうの写真には俺は入ってはいけんちゅうことやね(笑)。

 

北村:入らないのと入ってるのと、両バージョン作りましょう(笑)。さて、早速ですが、みなさん小泊のご出身ですか?

「入ってる」バージョン。左端が濱野良夫(はまの よしお)さん

 

新谷:そうです。学生時代に一度出て、金沢で仕事していたことがあるけど、またこっちに戻ってきて、かれこれ30年くらいになります。

 

濱本:私も同じ。ここで生まれ育って、一度出て、10年くらい前に戻ってきました。

 

北村:小泊の人たちはほとんど地元出身ですか?

 

新谷:そうだね。ただ、少ないけど、あれ、Iターンていうの?

 

濱本:そう、移住してきた人たちもいるね。

 

北村:子供の頃の小泊と比べて一番変わったことは何ですか?

 

新谷:何といっても人が少なくなったことかな。子供も大人もいないっていう感じ。

 

濱野:俺も20年くらい前にこっちに帰ってきたんやけど、そのときの「若い衆」がそのまま年齢を上げてきてる感じやわ。

 

北村:いまの「若い衆」は何歳くらいですか?

 

濱野:40代から50代が多いかな。上は60代半ばまでいるけど。なんせ自己申告なんで、本人が若いと言えば若い衆(笑)。

 

北村:30代はいないですか?

 

濱本:数えるほどしかいないね。小泊地区には「青壮年部」というグループがあって、年齢制限は特になし。「若い衆」というと、うちらの感覚では50歳くらいまでかな。どのみちあまり若くないけど(笑)。

濱野:若い人間がほとんどおらんさかい我々がやってる感じかな。

 

北村:自分たちがやらねば、という危機感でがんばってる感じでしょうか?

 

濱野:危機感というのは別にないよ。

 

濱本:がんばってるというより、ただ飲みたいだけやないかな。飲み会がメインやからね(笑)。

 

北村:ところで、いま我々のいる能登学舎は、以前は小泊小学校の校舎だったわけですが、みなさん小泊小学校の出身ですか?

 

濱本:我々3人ともそうです。

 

新谷:自分のときはまだ平屋の木造校舎だったなぁ。

 

北村:そうなんですか!? いまはこうして金沢大学が能登学舎として使わせていただいていますが、みなさんこの学舎にいらっしゃる機会はどのくらいありますか?

 

濱本:今日は3階まで上がったけど、もしかしたら自分の小学校卒業以来かも、と思うくらい久しぶりだね。

 

新谷:桜まつりや七夕でグラウンドを使ったり、たまにソフトバレーの練習で体育館を使ったりするから年に4、5回は来るかな。でも、確かに2階3階まで上がることはないなぁ。

 

北村:これだけご近所でも、中に入る機会はほとんどないのですね。今日は3階の講義室に来ていただきました。能登里山里海マイスターの講義や、大人数の来客や会議のときに使っています。

 

濱野:小学校の音楽室だった部屋ね。

 

北村:はい、音楽室の面影がたくさん残っていて素敵な部屋ですね。ところで僕は、西のほうから小泊に来る道の最後の下り坂の景色が大好きです。街路樹に切り取られた空が真上に伸びて正面に青い海が見えるとき、とても感動します。

小泊の海に向かって走る道(撮影:北村健二)

 

濱本:ああ、バイパスのことだね。

 

北村:そのバイパスの草刈りや枝払いを小泊のみなさんがなさっているのですよね。

 

新谷:そう、草刈りは県からの委託でやっています。元をたどれば30年くらい前に、バイパスの開通を記念して小泊小学校の関係者、子どもから大人まで、みんなで協力して桜の苗木を植えました。小泊小学校の卒業記念に植樹をしたこともあるよ。その桜の手入れから始まって、いまは小泊地区の青壮年部として年に2回作業しているわけ。

 

北村:昨年10月初めの作業のときに飛び入りで僕も参加させていただき、みなさんのチームワークで作業がみるみる進む様子を目の当たりにしました。

 

濱野:ただ、20年前と同じメンバーだから、だんだんしんどくなってきてる。

 

新谷:人数も減ってきてるし。

 

濱野:ここにマイスターでも参加してくれたら歓迎するよ。反省会とセットで(笑)。草刈りはともかく、「月に一回集まって飲まんか?」という理由で色々な行事を始めたようなもんだからね。

 

新谷:情報交換会。あるいは親睦会。

 

濱野:いや本当に、これがなくなったら小泊は相当寂しくなるやろね。

 

濱本:小泊地区独自の草刈りもやっています。

 

濱野:「道刈り」のことやね。毎年8月初め。

 

濱本:以前は小泊の北側の高台にある田んぼでみんなコメを作っていて、田んぼに入る道の草刈りをやってたんだけど、その流れで今も続いているわけ。草刈りの作業のためにそれぞれの家から一人出すという決まりで。

 

濱野:「一軒一人出し」で、出せないと「出不足(でぶそく)」といってお金を払うんのよ。

 

北村:今でもその仕組みが生きているのですね。

 

濱本:そう、今も。

 

濱野:これはどの地区でも同じだと思うよ。

 

濱本:草刈り機を出すといくら免除とか、軽トラックを出すといくらとか、金額が決まってるんだよね。家族全員が76歳超えたら免除になるけどね。

 

北村:なるほど。あっ、ここで珠洲市自然共生室の宇都宮さんも来てくださいました。

 

宇都宮:遅くなりました。お話聞かせていただきます。

最終的には5名の座談会に発展

右から2人目が宇都宮大輔(うつのみや だいすけ)さん(珠洲市自然共生室)

 

北村:遠慮なく発言してください。ところで、先ほど「桜まつり」というお話が出ましたが、これはどのようなものですか?

 

新谷:「里山里海 桜まつり」と題して、毎年4月の原則第2日曜日に開催していて、今年で19回目になります。2、3回目までは児童公園でやってたんだけど、参加者が増えると駐車場や水回りを確保する必要があって、小泊小学校でやることになりました。元々、小泊小学校の学区である雲津、伏見、高波、小泊という4地区が「小泊校下地域振興会」となっていて、この地域の振興を目的として始まった行事です。先輩や仲間たちが道を創ってくれたので、これからも「桜まつり」をしながら、親睦を深めていきたいと思っています。

民舞明千代会のみなさん

(2017年の「里山里海 桜まつり」より。写真提供:新谷泉さん)

 

北村:どのくらいの範囲に宣伝しているのですか?

 

新谷:小泊校下地域ではチラシを配り、三崎町の15地区の掲示板でポスターを貼っています。

 

北村:やはり地域内の親睦が主な目的なのでしょうか。

 

濱野:外から来る人もおるよ。天気にもよるけどね。

 

新谷:「広報すず」に告知を出したことも以前にはあります。

 

北村:では、せっかくのご縁ですので、今回はこの座談会の記事のなかで告知させていただきますね。

 

濱野:文章うまく書いといてもらえると助かるわ(笑)。

新谷:最近はアトラクションも少なくなってきているけど、桜を見ながら親睦を深められたらいいと思っています。

 

北村:19年も続けているのは立派です。私たちも可能な限り参加したいと思います。それに限らず、能登学舎で働く我々に対して望むことはありますか?

 

濱本:うーん、特にないです(笑)。

 

北村:えっ!? 僕は今日、千本ノックを受ける覚悟でいたんですが・・・。

 

濱本:いや、草刈りの後の飲み会に北村さん来てくれたように、来ればみんな喜ぶし、他にもたくさん連れてきたらみんな大歓迎ですよ。

 

濱野:地域の一番の情報交換の場だから、そこに入っていけばいいと思うよ。「ノミニケーション」というやつね。

 

宇都宮:以前にはバーベキューなどイベントでよくご一緒しましたね。

 

濱野:うちらのバーベキューをお盆でなく別の時期に変えたらいいんじゃないかな。

 

宇都宮:そうですね。能登学舎で働く人たちのほとんどは地元出身じゃないので、お盆はこっちにいないことが多いですからね。

 

新谷:そういえば、七夕の反省会として7月にやるときもあったかな。

 

北村:いずれにしても、これからできるだけ積極的に交流の機会を持つようにしたいと思います。

 

濱野:俺いつも言うんだけど、学舎からもっと攻めていかんと。

 

新谷:私らも、交流したいと思っているけど、いざとなると少し緊張するなぁ(笑)。

 

濱野:なんか変な虫とか拾ってきて「これ何ですか?」って聞けばいいんじゃない?(笑)

 

新谷:せっかくここに能登学舎があるので、もっと我々も使わないともったいないんだけど、なかなかきっかけがないかもしれんね。勉強苦手やしなぁ(笑)。

 

濱本:きっかけは確かにないなぁ。

 

濱野:子供が遊びに来たりすると活気が出るんじゃないかな。

 

濱本:体育館とか使えるの?

 

宇都宮:事前に予約を入れていただければいつでも使えますよ。我々は去年から平日の夜にバドミントンを週1回やっているので、興味ある人はぜひいらしてください。

新谷:そういえば、木造から鉄筋に新築するとき、校下の住民も利用するので、本来の基準より少し大きめのグラウンドと体育館を造ってもらったと聞きました。

 

濱野:体育館以外に談話室もあるし、「おらの学舎だ」と思ってどんどん使ったらいいということだね。

 

宇都宮:交流しましょうと言って色々なことを始めましたけど、定期的に続けるのはなかなか難しいなぁ、と感じています。

 

北村:地域に根差した研究には地域の人たちからお話を聞くことも大事です。僕自身もその意識を強く持ちたいと思います。

 

新谷:まずは桜まつりのアトラクションの一環として、マイスターや里山里海の説明をしてもらえるとありがたいです。桜まつりの写真を持ってきたので、よかったら参考にしてください。

雲津白山太鼓のみなさん

(2017年の「里山里海 桜まつり」より。写真提供:新谷泉さん)

 

北村:ありがとうございます。桜まつりでお時間をいただく件、喜んでお受けします。ところで、今日の座談会の写真は珠洲市自然共生室の伊藤知晶さんに撮影していただいています。伊藤さんから何かコメントありますか?

 

伊藤:お酒という言葉が何度も出てきたので、飲み会の席でお話をもっと聞きたくなりました。

 

濱本:もちろんいつでも大歓迎。

 

北村:NPO法人能登半島おらっちゃの里山里海と珠洲市自然共生室の人たちが1階、金沢大学が2階で働いています。能登学舎の中でもますます連携を強めたいですし、もちろん地域の人たちとも。「広報すず」のコーナー名は「能登学舎の窓から」です。ここの窓から見えるのは小泊の家々、そして里山里海の景色です。私たちが地域に根差した活動をするにあたり、まずは最も身近な地元の人たちとの交流を大切にしていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

 

濱野:やけにご丁寧にまとめたね(笑)。

 

(この座談会は2018年1月26日に能登学舎で実施されました。本稿は、『広報すず』2018年3月号掲載記事に加筆修正した「完全版」です)

 

撮影協力:伊藤知晶(珠洲市自然共生室)

能登弁表記監修:納谷春佳(能登里山里海マイスター第1期修了生)