このプログラムは国立大学法人金沢大学とパートナー自治体(石川県、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)によって実施されています

座談会「地域を支える若い力」

(2018年3月掲載)

 

北村:「広報すず」の「金沢大学能登学舎の窓から」というコーナーを2018年2月号から3回にわたって僕が担当することになりました。そして、これを僕は珠洲の人たちとの対話の機会として活用させていただくことにしました。最終回となる今回は、能登における金沢大学の大切なパートナーである珠洲市の職員である陳祐さん、灰庭さんのおふたりがゲストです。なお、「広報すず」ではこのおふたりですが、この「完全版」では西さんにも助っ人として参加していただけることになりました。今回、みなさんには個人の立場で自由に考えを述べていただければ幸いです。まずは自己紹介をお願いできますでしょうか?

 

陳祐:陳祐喜和(じんすけ よしかず)と申します。市役所での所属は危機管理室、年齢は32歳です。出身は川浦町で、生まれてから珠洲ひと筋です。

北村:ずっと珠洲にお住まいなのですね。珠洲出身で高校卒業後にここに残る人はどのくらいいますか?

 

陳祐:身の周りでいうと、飯田高校の同学年160人のうち、卒業後に残ったのは自分含め2名のみです。ちなみに、もう1名も市役所の職員です。

 

北村:2名? そんなに少ないのですか!?

 

陳祐:何年かして戻ってきた人を加えても10人に満たないと思います。

 

北村:1割にも届かないのですね。

 

陳祐:将来、珠洲に戻ることを考える人は少なくないと思います。ただ、進学や就職で一旦珠洲から出る人が多いことは確かです。

 

灰庭:私は灰庭武信(はいにわ たけのぶ)です。観光交流課で働いています。出身は金沢で、大学卒業までずっと金沢に住んでいました。卒業と同時に珠洲に移住して4年経ちます。

北村:移住したきっかけは何ですか?

 

灰庭:祖父母の家が折戸町にあり、子どもの頃から年に数回に来て田んぼの手伝いなどしていたので、珠洲は元々なじみのある土地でした。就職にあたり、大学のゼミの先生からの勧めもあって珠洲市の採用試験を受け、合格したので移りました。

 

西:企画財政課の西靖典(にし やすのり)です。移住支援から自然共生まで色々な仕事をしています。大学との連携も担当業務なので、能登学舎のみなさんとはよくやり取りしています。

 

北村:いつも大変お世話になっています。実は「広報すず」の原稿提出先も西さんです。西さんはこの座談会に一体いくつのお立場で参加してくださっているのでしょうか?

 

西:ゲスト2名の人選からこの会合の日時・場所の調整までしました。さらに、カメラマンも兼ねています。それなのに、「広報すず」の記事には一切登場しません(笑)。

左から北村、灰庭さん、陳祐さん。

レンズの手前に西さん(写っていませんが・・・)。

 

北村:誰よりも貢献する黒子役になっていただき、ただただ脱帽です。この「完全版」では、ぜひ登場人物のひとりとして自由にご発言いただければ幸いです。西さんはどちらのご出身ですか?

 

西:僕も陳祐さんと同じく珠洲市の出身です。正院町です。

 

北村:珠洲出身者と移住者が揃っているわけですね。灰庭さんは、いざ珠洲に移り住んでみてどう感じましたか?

 

灰庭:市役所の先輩である陳祐さんのお誘いで日置の青年団に入り、「若い人が実はこんなにたくさんいるのか!」と驚きました。

 

陳祐:「たくさん」といっても約10名ですが…。

 

灰庭:私と同年代が3人ほどいますし、先輩も後輩もいます。職場以外でこのような人脈ができることは貴重です。

 

陳祐:珠洲の青年団活動は以前から盛んで、毎年開催する駅伝大会は今年で72回目の伝統行事です。また、提案による新たな活動もしています。戦争体験者の語りを記録したDVDの制作や、今年の2月に実施した「恋活バル」などがその例です。

 

北村:青年団が重要な役割を果たしているのですね。

 

陳祐:18歳から35歳の間に青年団で経験を積み、人とのつながりもできます。35歳を過ぎて違う立場になっても、青年団での経験が、この地で生きていくための絆を作ります。先輩たちが築いてきたことに感謝を忘れず、ここに住んでいる、戻ってくる、移住してくる若い世代が珠洲をさらに元気にするきっかけの場となることも目指しています。

北村:頼もしい言葉ですね。珠洲にとって課題と感じることは何ですか?

 

灰庭:やはり人が少ないことですね。僕の住む日置地区は限界集落が多く、集落の草刈りもお年寄りばかりで、今後、土地の管理を担えるような若い力が必要と感じます。

 

陳祐:過疎高齢化は確かに進行しています。さいはての珠洲で色々なものを築いてきた人たちが少なくなり、同じことをやるのに、例えば昔は10人が参加していたけどこれからは1、2人しか集まらない、ということも起こってくるかもしれません。

 

北村:若い人が珠洲に来るきっかけをどう作るのがよいでしょうかね?

 

灰庭:Uターンは、こちらに既に家があるという点で、Iターンよりは来やすい気がします。また、僕のようなM(孫)ターンも、既に知っている土地なので来やすい利点があります。僕の父も同級生のほとんどが珠洲から外に出て暮らしています。特に金沢にはMターン候補者が多くいるのかもしれません。

 

陳祐:人口が減らないことが理想ですが、同時に、いまここに住んでいる人たちが関心をもち、地域のために活動していくことも大切だと思います。

 

北村:その意味でも、さきほどおっしゃった青年団がひとつの大切な組織なのですね。

 

陳祐:平成29年度に珠洲市青年団協議会の会長を務めさせていただき、先ほど言った例のほかにも「のど自慢」など様々な活動を通じた社会勉強の重要性を再認識しました。青年団活動が市全体として活発なのは、奥能登のなかでも珠洲ならではの特徴です。

 

灰庭:金沢の家族や友人と離れて暮らしている僕にとって、青年団の人たちは兄弟姉妹のように感じます。日置青年団は特に仲がよいです。その日置青年団の団長を平成30年度に務めることになりました。大学時代に新しいサークルを立ち上げ、個性のある人たちをまとめていく大変さを経験しました。それを生かしたいと思います。

北村:ちなみに何のサークルですか?

 

灰庭:フットサルです。

 

北村:ということは、サッカーを本格的にやっていたのですね?

 

灰庭:いえ、それまでまったく未経験でした(笑)。

 

北村:さて、次の質問です。珠洲のなかで好きな場所はどこですか?

 

灰庭:木ノ浦海岸です。妻と時々カフェに行ってくつろいでいます。子どもの頃に父親と磯遊びに来た懐かしい思い出もあります。父にとっては高校まで過ごした故郷です。自分も子どもに磯遊びの思い出を受け継いでいけたらいいと思っています。

 

陳祐:自分も家の前の海が好きです。小さい頃から親父や爺ちゃんが船で漁に出るときに付いていきました。泳ぐのも楽しかったし、海から自分の家や町を見るのが好きでした。見下ろせば地元のきれいな海もありますし。思い出がつまった光景です。

 

北村:おふたりとも外浦ですね。正院の西さんは内浦ですが、違いはありますか?

 

西:自分も波打ち際から50メートルのところで育ったので似ています。内浦の魅力は、天候によっては海の向こうに立山が見えることです。

 

北村:立山が見えると確かに感動しますね。

 

西:また、内浦が穏やかなときに家族で外浦に釣りに行ったら大時化だった、というようなことは時々あります。

 

陳祐:逆もあります。風向きによって海の様子がまったく違いますね。

 

西:また、外浦は内浦に比べて砂浜が少ないですね。

 

陳祐:蛸島など内浦では定置網を使うのに対して、外浦は海が荒れやすいこともあり、せいぜい刺し網など、その日のうちに網を上げる漁法が中心です。大きな船も少なく、サザエなど素潜りや海藻採りなどが多いです。

 

西:海が荒れるといえば、波の音を聴きながら育っているので、どんなに波の音が大きくても眠れます。

 

陳祐:確かに! 外浦では北風が強いと家がきしむこともありますが、もうその感覚が身体にしみついているので問題なく眠れます。逆に、山で育った人は蛙の鳴き声がうるさくても平気で眠れると聞いたことがあります。僕は眠れないと思います(笑)。

 

西:東京に行くと、車の音が気になってなかなか眠れません。

 

陳祐:実は、まったく音がない場合も、かえって落ち着かなくて眠れません。

 

北村:そういうものなんですね。では、最後の質問です。能登学舎との関わりはありますか?

 

灰庭:市役所に入って1年目は自然共生室で働いていたので、学舎の先生たちとやり取りがありました。観光交流課で働く今も、生き物観察会の関連でお知恵を借りることがあります。

 

陳祐:自分は「能登里山マイスター」2期生で、8年ほど前は週末ごとに能登学舎に通っていましたのでなじみ深い場所です。

 

西:自分は1期生で、いまも仕事で大いに関わりがあります。

 

灰庭:現在、ヘルスツーリズムにも従事しているので、自然環境に詳しい先生たちからアドバイスをいただきながらよいプログラムを作っていきたいと思います。

 

北村:貴重なお話をありがとうございました。このように熱い思いをもつ人たちが市を支えているのだと実感できました。

 

西:僕は青年団を卒業して6年ほど経つので彼らより少し上の世代ですが、いまの若い世代がこのように思ってくれとるんなら、もうしばらく大丈夫だろうと思いました。

 

陳祐:この4人でまた集まって、一杯やりましょう!

 

北村:結論はやっぱりそうなるんですね(笑)。

 

(この座談会は2018年2月27日にすず市民交流センターで実施されました。本稿は、『広報すず』2018年4月号掲載記事に加筆修正した「完全版」です)

 

撮影:西 靖典(珠洲市企画財政課)

聞き手:北村 健二(金沢大学地域連携推進センター(能登学舎))