このプログラムは国立大学法人金沢大学とパートナー自治体(石川県、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)によって実施されています

珠洲にSDGsがやってきた

(2018年9月掲載)

僕が生まれ育った港街は、日本で2番目に人口が多い大都市だ。でも、ほんの160年ほど前までは小さな農漁村だった。黒船が来て開港し、国際都市への歩みを踏み出したのだ。

当時の住民はその変化をどのように見ていたのだろうか。外からきた圧倒的な文明の力に気おされ、戸惑い続きであったことは想像に難くない。

それでも、外来の知識・技術・文化をただ押し付けられるだけなく、自分たちのためになるように使いこなそうと工夫した人も多いはずだ。

例えば、良質の水が湧いたこの街の高台に外国人が日本で初めて造ったのがビール工場。今ではビール大国(?)となった日本だが、元は外来の技術であり、それに手を加えて独自の発展を遂げてきた。まさに和魂洋才である。

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珠洲市が国から「SDGs未来都市」に選定され、この10月から金沢大学能登学舎に「能登SDGsラボ」が開設されることとなった。環境・社会・経済の各種活動をつなぎ合わせ、相乗効果を生むことが目的である。

SDGsは、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略称で、世界中で2030年までに達成すべき17の大目標(ゴール)と169の個別目標(ターゲット)目標を定めている。

現在、奥能登のなかでSDGsはどのくらい「我が事」として認識されているだろうか。「エスディージーズ」という読み方も含め、馴染みにくさを感じる人が多くてもまったく不思議ではない。外から来た得体の知れないもの……まるで黒船のようである。僕自身、SDGsの社会への昨今の浸透ぶりはまったくの予想外で、しかもそれを対岸の火事のように見ていた、というのが正直なところである。

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では、もう目の前にいる黒船とどう対峙すればよいのだろうか。ここで、文明開化時代の和魂洋才を思い出したい。持続可能な社会を、奥能登に合う形で追求していくこと。そのなかでSDGsをどのように活用できるのか。

例えば、金沢大学能登学舎で実施されている「能登里山里海マイスター」育成プログラム。開始から11年の月日を重ね、現在までに165名のマイスターを輩出してきた。これは、SDGsのターゲット4.7と関連が深い。


SDGs ターゲット4.7
 2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、(中略)、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。

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そして、マイスターを含む地域づくりの担い手たちがますます活躍できる社会にするために、SDGsをどう活用できるのか。このように自分にとって身近な課題から考えることによってSDGsを我が事にしていくことができる。

マイスターはじめ地域の人たちとの会話のなかで、SDGsという単語が相手から出る場面が少しずつ増えている。この新しい流れをどう自分のチャンスに変えることができるのか、探り始めている人は既にいる。黒船の良し悪しをいくら議論しても、黒船を追い返せるわけではない。ならば、自分たちに役立つ活用策を早く考え始めるほうが賢明だ。

SDGsを通した地域づくりを我が事として考える仲間をひとりずつ増やしていくこと。それをまずは目指したい。そして、そのための対話の場を作り、彩り豊かな発想から未来への道筋を見つけたい。これが僕自身の黒船との向き合いかたである。

 ところで、奇しくも僕の故郷である横浜市もSDGs未来都市に選定された。海に面している点は珠洲と共通する。北前船によって外部との交流の起点だった珠洲と、明治以降の近代化のなかで国際化した横浜。それぞれが独自性を発揮してどのようにSDGsを活用した街づくりを進めるのか、注視していきたい。

北村 健二
 
(本稿の一部改訂版は『広報すず』2018年10月号「金沢大学能登学舎の窓から」欄に掲載されました)